濱口竜介プロスペクティヴ in Kansai 2013.6/29[sat]-7/19[fri]

FILMS 上映作品

  • 不気味なものの肌に触れる

    不気味なものの肌に触れる

    2013年 / 40分(予定) / HD(Blu-ray上映) / カラー
    製作:LOAD SHOW、fictive / 監督:濱口竜介 / 脚本:高橋知由 / 撮影:佐々木靖之
    出演:染谷将太、渋川清彦、石田法嗣、瀬戸夏実 ほか

    斗吾(トウゴ)の暮らす町に弟・千尋が引っ越して来た。その日以来斗吾の町では不穏なできごとが起こり始める。

    『親密さ』以来ほぼ一年ぶりの劇映画。新進気鋭の高橋知由の脚本は、触れる/触れないを軸に、兄弟、二組の恋人達、友人同士の微妙にして不穏な関係を描く。他人の脚本で撮るのは『永遠に君を愛す』以来でほぼ四年ぶりの濱口は、彼の方法論を熟知したキャストとともにこれをどう形にして見せるか(原稿執筆現在撮影中)。

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  • 親密さ

    親密さ

    2012年 / 255分(途中休憩あり)/ HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:ENBUゼミナール / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影:北川喜雄 / 編集:鈴木宏 / 整音:黄永昌 / 助監督:佐々木亮介 / 制作:工藤渉 / 劇中歌:岡本英之
    出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか

    ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。

    4時間を越える大作だが、ENBUゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。

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  • 親密さ(short version)

    親密さ(short version)

    2011年 / 136分 / HD(Blu-ray上映) / カラー
    製作:ENBUゼミナール / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影監督:北川喜雄 / 編集:鈴木宏 / 舞台撮影:飯岡幸子、加藤直輝、長谷部大輔 / 助監督:佐々木亮介 / 制作:工藤渉 / 劇中歌:岡本英之
    出演:佐藤亮、伊藤綾子、手塚加奈子、新井徹、菅井義久、香取あき ほか

    衛と佳代子は10年ぶりに再会した生き別れの兄妹。関係を周囲に言い出せない二人は恋人同士と誤解され…

    短縮版ではなく、完全版の中の舞台劇『親密さ』を抜き出し独立させたもの(ただし完成はこちらが先)。『何食わぬ顔(short version)』の場合のような映画内映画ではなく、映画内の舞台劇、それも映画内の演出家役・平野鈴に演出を託した舞台劇が、完全な映画として成立している。濱口は何度奇跡を起こすのか?

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  • THE DEPTHS

    THE DEPTHS

    2010年 / 121分 / HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:東京藝術大学大学院映像研究科・韓国国立フィルムアカデミー / プロデューサー:原尭志、シム・ユンボ / 監督:濱口竜介 / 脚本:濱口竜介、大浦光太 / 撮影監督:ヤン・グニョン / 照明:後閑健太 / 整音:金地宏晃 / 美術:田中浩二 / 編集:山崎梓 / 助監督:菊地健雄
    出演:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、村上淳 ほか

    韓国人カメラマン・ペファンは日本滞在中に男娼のリュウをモデルとして見出すも、過酷な運命が二人を待つ。

    東京藝術大学と韓国国立映画アカデミーの共同製作。キャストだけでなくスタッフも混成チームという容易ならざる状況を、濱口は作品そのものの危うい魅力へと転化し、韓国/日本、ホモセクシャル/バイセクシャル/ヘテロセクシャル、大人/子供、金持ち/貧乏人、堅気/ヤクザといった境界線の上で登場人物達を漂流させる。

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  • 永遠に君を愛す

    永遠に君を愛す

    2009年 / 58分 / HD(Blu-ray上映) / カラー
    製作:竹澤平八郎 / 監督:濱口竜介 / 脚本:渡辺裕子 / 撮影:青木穣 / 照明:後閑健太 / 録音:金地宏晃 / 美術:原尚子 / 編集:山崎梓 / 助監督:佐々木亮介 / 音楽:岡本英之
    出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光眞弓、小田豊 ほか

    結婚式当日の花嫁、永子は幸福の絶頂…のはずが、永子には婚約者・誠一に言い出せない秘密があった。

    秀れた監督でもある渡辺裕子の脚本は、普通に映画にすればこの上なくウェルメイドなスクリューボール・コメデイーとなったはずだ。しかし濱口は普通ではない。生まれ落ちたのは、凍りついた笑いと不思議な解放感が共存する怪作である。ヒッチコックの『スミス夫妻』に匹敵するこの異常事態を、あなたは見ずにいられるのか?

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  • PASSION

    PASSION

    2008年 / 115分 / HD(Blu-ray上映) / カラー
    製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / プロデューサー:藤井智 / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影:湯澤祐一 / 照明:佐々木靖之 / 録音:草刈悠子 / 美術:安宅紀史、岩本浩典 / 編集:山本良子 / 助監督:野原位
    出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦 ほか

    同級生の結婚を祝福する若者たち。しかしそこで男の浮気が発覚し、カップルは別々の夜を過ごすことになる。

    濱口竜介の名を世界に知らしめた記念碑的作品。5人の男女の恋愛感情がもつれ合い、ほんのわずかのきっかけでさえ激しく変化する様が、緻密に構成された脚本と周到でねばり強い演出の下に、繊細に、かつエモーショナルに描かれる。そして緻密さと周到さに支えられ、偶然を超えた次元で、今や伝説となった映画の奇跡が訪れる。

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  • Friend of the Night

    Friend of the Night

    2005年 / 44分 / DVCAM / カラー
    製作:岡本英之 / 監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:濱口竜介、松本浩志 / 録音:佐々木亮介 / 助監督:野原位
    出演:鈴木里美、岡本英之、大平恵、梶尾翔平、櫻木麻衣羅 ほか

    脚本家が慣れないホラー映画の発注に頭を悩ませ、「怖い話」を聞き回るうちに想いを寄せる女の過去を知る。

    最初期の『何食わぬ顔』から現時点での最新作『親密さ』まで、濱口とのコラボを継続しているミュージシャン岡本英之の依頼により、ライブでの上映のために製作された中篇。怖い映画をという要望に応えて、血も流れず、手や足も千切れないのに、本当に恐ろしい作品となっている。岡本の何食わぬ顔、そして少女が体験する悪夢(トラウマ)

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  • はじまり

    はじまり

    2005年 / 13分 / DVCAM / カラー
    製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / プロデューサー:遠藤薫 / 撮影:松本浩志 / 録音:井上和士 /助監督:野原位、笹嶋俊 / 音楽:川村岬、望月晃
    出演:梅田つかさ、花澤拓巳、馬場省吾

    サッカー観戦を終え上機嫌な友子は、自作の詩を即興して帰る田舎道で同級生の洋太にばったり会ってしまう。

    冒頭での長回しの少女の独り言から一気に引き込まれる。こんな長回しができ、こんなセリフが書けて、こんな風に少女の表情・口調・歩き方を演出できるのは濱口竜介以外にはいない。卒業間近の中学生の男女三人の、その年頃に特有の微妙な「三角関係」が見事に描かれる。濱口の才能に技術が初めて追い付いた画期的作品。

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  • 何食わぬ顔(short version)

    何食わぬ顔(short version)

    2003年 / 43分 / 8mm(DVCAM上映)/ カラー
    製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎 / 録音:井上和士 / 音楽:ROMAN
    出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵 ほか

    浪人生の松井は、想いを寄せる育子に会うため夏休みに東京に来るが、育子には既に心を通わせる男性がいた。

    このshort versionはlong versionの短縮版ではなく、映画内映画の部分のみを取り出したものだ。それが独立した中篇作品として、long versionの中とは全く異なる顔を見せる。このversion自体が、コンテクストを抜きにして、多義性へと開かれているからである。『親密さ』の二つのversionと同じ事態が既に生じているのだ。

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  • 何食わぬ顔(long version)

    何食わぬ顔(long version)

    2003年 / 98分/8mm(DVCAM上映) / カラー
    製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎 / 録音:井上和士 / 音楽:David Nude、ROMAN
    出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵 ほか

    友人に言われるままに亡兄の遺作となる8ミリ映画を撮影する野村。彼の煮え切らない態度が周囲を戸惑わせる。

    技術的な諸々の難点を除けば(これは大学の映研で撮られた8ミリ映画なのだ)、濱口竜介が既に濱口竜介であることが驚異的だ。的確な演出とショット割り。映画と映画内映画の関係を複雑かつ緻密に構成した脚本。しかもここには、若さと仲間との親密さから来る瑞々しさが溢れている。約10年振りに観られる幻のバージョン。

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東北三部作

  • なみのおと

    なみのおと

    2011年 / 142分 / HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三 / 監督:濱口竜介、酒井耕 / 撮影:北川喜雄 / 整音:黄永昌

    2011年7~8月に撮影された岩手県から福島県沿岸部の、津波被災者6組11人への対話形式インタビューの記録。

    酒井耕と共同監督で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。

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  • なみのこえ 気仙沼

    なみのこえ 気仙沼

    2013年 / 109分 / HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:サイレントヴォイス / プロデューサー:芹沢高志、相澤久美 / 監督:濱口竜介、酒井耕 / 実景撮影:佐々木靖之

    2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。

    人口が減り続け復興の未来の見えない気仙沼だが、未来への希望を人々は微かに見ようとしている。濱口と酒井は『なみのおと』の方法論を受け継ぎながらもそこに着目し、震災に直接関わる内容を超えて、被災者の過去をも掘り起こそうとする。喋るのが苦手な人にあえてカメラの前で語らせることで、確かに見えてくるものがある。

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  • なみのこえ 新地町

    なみのこえ 新地町

    2013年 / 103分 / HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:サイレントヴォイス / プロデューサー:芹沢高志、相澤久美 / 監督:濱口竜介、酒井耕 / 実景撮影:北川喜雄 / 整音:鈴木昭彦

    2012年1月から2012年6月に行われた福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビューの記録。

    震災後約一年、原発事故後の不安と海の汚染や海産物の風評被害の下にある福島県新地町という、被災地の中でも相当に微妙な状況の下で、濱口と酒井は、『なみのおと』の特異な方法論を先鋭化・徹底化させながら、複雑なものを単純化せず、分かり易くせずに提示し、観客に共有させようと、あるいは共有の困難さを示そうとする。

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  • うたうひと

    うたうひと

    2013年 / 120分 / HD(Blu-ray上映)/ カラー
    製作:サイレントヴォイス / プロデューサー:芹沢高志、相澤久美 / 監督:濱口竜介、酒井耕 / 撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之 / 整音:黄永昌 /
    助成:文化芸術振興費補助金 ほか

    宮城県に暮らす語り手による東北地方伝承の民話語り。これは同時に彼らを訪ね続けた聞き手の記録でもある。

    酒井耕との共同監督作品で被災地に取材しながら、ここで濱口と酒井が取り上げるのは民話(昔話)を語る老人達である。取材やインタビューの経験から触発されたこの作品では、語りは聞き手の反応があってのコミュニケーションであることが浮き彫りにされ、さらには映画とは何かの根源さえも問われることになるだろう。

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作品解説:木村建哉 (映画研究者)

特別上映作品

  • MISSING

    MISSING

    2011年 / 55分 / HD(Blu-ray上映) / カラー
    製作:神戸映画資料館 / 監督:佐藤央 / 脚本:小出豊 / 撮影・照明:四宮秀俊 /録音:新垣一平 / 音楽:近藤清明 / 制作:唐津正樹
    出演:土田愛恵、きく夏海、昌本あつむ、信國輝彦、八尾寛将、堀尾貞治 ほか

    小学生の学は出来心で盗んだ同級生のたて笛をなくす。探すなか辿り着いたのは、孤独な女・晧子の家だった…。

    佐藤央は同世代の中でも最も卓越した演出力を持った監督です。
    『MISSING』は古典的な演出術を体得する彼の現時点での到達地であり、撮影者・四宮秀俊との共同作業の極点でもあります。こんなにも切実に人の声が響き得るのか、と多くの人に驚いて欲しい。今回の特集の中で、上映できることを嬉しく思います。(濱口)

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  • 最後の手紙

    最後の手紙

    2001年 / 62分 / 35mmフィルム / 白黒
    製作:Zipporah Films, Inc. 、Ideal Audience、Arte France Cinema / 監督・編集 : フレデリック・ワイズマン / 原作 : ヴァシリー・グロスマン / プロデュース : ピエール=オリヴィエ・バルデ / 撮影 : ヨルゴス・アルバニティス
    出演 : カトリーヌ・サミー

    舞台劇『最後の手紙』の映画的再構築。ナチの強制収容所で死に向かう女医は口述筆記の手紙で息子へと、自らの恐怖、威厳を伝える。

    書かれた言葉、書かれるべき言葉を口にすることは俳優の仕事そのものです。それが必然的にもたらす大仰さ、不自然さをワイズマンは記録していると言えます。ただ『最後の手紙』は書き言葉とは本来的に死者の言葉であることの証拠映像にも思えます。では、それを口にする<俳優>とは一体何者なのでしょうか?(濱口)

  • 濱口竜介
  • 寄稿1:山根 貞男 -Yamane Sadao-
  • 寄稿2:中山 英之 -Nakayama Hideyuki-
  • 寄稿3:渥美 喜子 -Atsumi Yoshiko-